床下の構造は建築基準法の変遷や技術・設計の進歩により、さまざまな変化を繰り返してきました。床下の役割は快適な住まいを構造的・環境的に支えることであり、文字通り住宅の「基礎」、「土台」であると言えます。 ところが昨今、住まいの耐震性や室内の快適環境を追求していく中で、床下環境がむしろ悪化してしまう反面性が見受けられるようになってきました。

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従来の床下では、土壌面からの水蒸気発散や換気・通風不足が高湿化の主要因となっていました。特に通風が不足すると土壌からの水蒸気が逃げ場を失い、深刻な湿害を引き起こします。したがって従来型床下の高湿化は、立地条件による場合が多く、換気促進と防湿シート等による水蒸気遮断が有効な対策でした。一方で床面の断熱性が低いため(断熱材が無いなど)、床下低温化による相対湿度上昇は緩やかと言えます。

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最近の床下は、ベタ基礎の採用により、土壌面からの水蒸気の侵入をシャットアウトし、通気パッキン等による換気促進が図られています。しかし床面を断熱することにより、むしろ地熱の影響による夏場の温度低下が顕著となり、特に中央部付近の相対湿度は高く、結露のリスクにさらされています。高湿環境の要因は床下の低温化であり、立地条件にかかわらず湿害発生の恐れがあります。

最近の住宅で発生した床下湿害の例

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断熱材へ多量の結露が発生
(築10年、ベタ基礎・通気パッキン使用)

1階床面積30坪以上の広い床下ということもあり、床下中央部と外周基礎(外気導入部)が遠く、また床断熱材により室内の温度が遮断され、床下中央部の低温化が顕著な状態のため、多量の結露が発生していました。このような状態を放置すると、木部の含水率が上昇し、カビや腐れ、そしてシロアリによる被害発生が懸念されます。

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基礎底部に水溜りが長期間滞留
(築半年、ベタ基礎・通気パッキン使用)

広さ約20坪の2×4住宅の床下です。床面には厚い断熱材が施されており、その分室内の温度上昇が遮断され、床下の低温化が顕著となっていました。通気パッキンはあるのですが、結露や一部雨水浸入による水溜りが、乾燥しない状態で長期間滞留し、水溜りによる飽和~結露発生~さらに水溜りが増加、という悪循環のサイクルが懸念されます。

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大引きの全面にカビが発生
(築1年、ベタ基礎・通気パッキン使用)

広さ約20坪の床下です。床点検口を開けると、カビ臭いコンクリート臭がしており、床下内部の木部へ、カビが大量に発生していました。耐震性を考慮し、中基礎が多い床下であったことで、逆に通風性が悪くなり、特に床下中央部が低温化~高湿化し、木部含水率が上昇することで、カビが発生したものと推察されます。

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床板の各所へカビが発生
(築1年、ベタ基礎・基礎断熱)

広さ約18坪の基礎断熱の床下です。基礎外周を断熱し、自然換気口がない床下のため、何らかの換気防湿措置をとならければ、床下が高湿化するリスクがあります。この住宅では、床板へ大量のカビが発生。基礎断熱のため、床下内部の低温化は緩やかですが、それでも室内より温度は低く、コンクリートの養生水分や、生活水蒸気の侵入・滞留が湿害発生の主要因と考えられます。

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断熱材と基礎底面の結露+木部へカビが発生
(築15年、ベタ基礎・通気パッキン使用)

広さ30坪以上の広い床下です。床面の断熱材へ多量の結露が見られ、それにより、基礎底面のコンクリートに水溜りが出来ていました。床下は非常に高湿化しており、土台など木部の各所へカビも発生しています。広い床下では、中央部が外気の影響(換気+温度上昇)を受けにくく、地熱の影響を大きく受けて低温化するため、春~秋の温暖な時期に、相対湿度が特に上昇してしまう傾向となります。

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基礎底面の結露+水溜り+木部へカビが発生
(築15年、ベタ基礎・一般床下換気口)

広さ30坪以上の広い床下です。基礎底面のコンクリートに結露と結露による水溜りが発生していました。大引きなど木部へのカビも各所に発生しています。やはり床下中央部の低温化が深刻なため、温暖時期の床下相対湿度は非常に高く、特に冷たいコンクリート表面で飽和してしまう状況が確認されました。

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シロアリの食害+床下地面と木部へカビが発生
(築30年、露地布基礎・一般床下換気口)

広さ25坪の床下です。床下はカビ臭が強く、基礎換気口はあるものの、通風が感じられない状況でした。床下の地面から、束石と束を経由して、大引きまで蟻道(シロアリの通り道)があり、湿気を好むシロアリが発生しています。この状況を放置すると、食害により建物の強度が短期間で著しく低下する恐れがあります。

床下と結露

床下では温度差が生じるため、多くの場合、結露自体は日常的に発生しています。結露が発生しても、短時間で乾いてしまえば問題はありませんが、結露が乾かないままの状態が続くと、雑菌やカビが繁殖し、深刻な湿害が発生してしまいます。床下の空気が飽和(結露)しないよう空気を動かし、同時に相対湿度を下げることが、床下湿害防止のポイントと言えます。

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